「人材育成に、越境という“投資”」〜富士通がレンタル移籍で育てる次世代タレント〜【富士通株式会社・人事担当者の声】
グローバルITサービス企業として事業変革を推進する富士通株式会社。同社では、タレント人材育成施策の一環として、タレントプールを対象にローンディールの「レンタル移籍」を2019年より活用。社外での越境経験と社内のアサインメントを組み合わせた育成を進めています。 導入の背景や運用の実際について、Engagement & Growth統括部の松沢 剛さんと鮫島範子さんにお話を伺いました。
■活用サマリ
・導入プログラム:レンタル移籍
・目的 :タレント人材の育成
・対象 :タレントマネジメントプール
・選出方法 :手挙げ式(書類選考+志望動機審査)+所属長の承認
■ 導入背景
・導入初期は、タレントプール人材が社外で経験を積み、それを組織に持ち帰ることで活性化を図る狙いで、タレント向け人材育成施策として開始
・全社員対象の公募型施策へと一時的に拡張検討するも、HRBPとの議論を経て、再びタレント向け施策へと回帰
・社外との接点を広げ、戦略思考を高めることを目的に、社内のアサインメントと組み合わせた育成施策として位置づけ
■ 導入の決め手・継続理由
・現業から完全に離れ、6ヶ月以上フルコミットするタフアサインメント型である点
・経営との距離が近く、スピード感のある意思決定を自ら担う機会が得られる点
・事前準備から帰任後まで一貫したサポート体制があり、安心して送り出せる点
■ 制度設計・運用上の工夫
・「得た経験をどう還元するか」「自身の行動変容にどうつなげるか」を、上司と事前にすり合わせ、本部長の承認を得た上でエントリー
・タレント人材の成長課題・キャリアプランとレンタル移籍の狙いが合致したとき、送り出しの意義が最大化される設計
・人件費は所属元の事業部、研修費は人事部門が負担する形
・HRBPを募集段階から関与させ、帰任後の受け入れやフォローまで連携できる体制を構築
■ 担当者コメント
◎ 松沢 剛さん(Engagement & Growth統括部 シニアマネージャー)

経営層から常に求められるのはROI(投資対効果)です。「楽しかった」で終わるプログラムは、どれだけ本人が満足していても、会社としての投資は回収できません。だからこそ私たちは、応募の段階からビジネス還元へのコミットを明確にさせています。上司から承認を得た上で、その内容を応募フォームに記載させる。そうすることで、本人の覚悟だけでなく、上司と事前にしっかりすり合わせた上での挑戦であることが分かる仕組みにしています。さらに、タレント人材を推薦している上司の承認を得て送り出されます。それくらい、組織として責任を持って送り出す施策だと考えています。
人生において、レンタル移籍の期間はきっと大きな分岐点になります。後で振り返ったときに「あの経験があったから今の自分がある」と思えるくらいの経験になってほしい。仕事でも家庭でも富士通でもない「第三の居場所」で、自分を客観的に見つめ直す。実績やスキルだけでなく、自分のメンタルや価値観と向き合い、内省する日々を過ごしてほしいのです。社外でハイパフォーマーが打ちのめされ、そこから立ち直るリバウンドメンタリティを経験すること——それ自体が、将来経営を担う人材に不可欠な力だと思っています。
◎ 鮫島範子さん(Engagement & Growth統括部)

一定期間、タレント層の人材を送り出すのは、正直、所属元の事業部にとって決して小さくない痛みを伴います。それでも私たちが継続しているのは、帰任後の変化がリアルに見えているからです。経験者を見ていると、戻ってきた後の2〜3年間、「あれもやりたい、これもやりたい」「こうすれば上手くいくんじゃないか」と仮説を描き、他部署を巻き込みながら動き続ける。OSが丸ごとアップデートされて戻ってくる、そんなイメージです。現場にとっては一時的な痛みを伴うものの、それでも送り出してほしいと強く願っています。
課題として感じているのは、派遣期間中の上司の絡ませ方とモニタリングの質です。本人が挫けそうになったとき、社内に気軽に相談できる存在がいるかどうかが、乗り越えられるかどうかの分岐点になる。プログラムの性質上、それなりのポテンシャルを持った人材に行ってもらうことが前提ですが、組織としてのバックアップ体制もさらに厚くしていくことが今後の課題です。
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